愛犬のしつけで一番最初にすることは、ワンちゃんにワンちゃん自身の名前を覚えさせることです。名前を認識すれば、それだけでそこから先のしつけがより効率的になります。トイレのしつけやケージの中で留守番させたりなど、どのしつけでも自分が呼ばれていると分からなければ中々うまくいかないものです。
注意点としては、名前を統一して呼んであげることです。「○○ちゃん」「○○くん」なども気をつけましょう。呼び方が変わるとワンちゃんが混乱してしまいます。しつけは、ワンちゃんが家族の一員として生きるために必要なものです。そこで今回は『しつけの順番』などについてお伝えしていきます。
目次
犬のしつけはこの順番で
ここではより効率的なしつけを目的として、しつけの順番についてみていきましょう。家族の一員として生活するうえでのトイレのことや、飼い主さんとの信頼関係を作ることなど、いろいろあると思いますが、次のように項目にしてご紹介します。
1.名前を覚える
2.トイレトレーニング
3.アイコンタクト
4.ボディコントロール
5.ハウストレーニング
6.社会性を身に付ける
7.お座り、待て、伏せを覚える
このような順番で教えてあげないと、同時進行で進めていくとワンちゃんは何が正解か分かりづらくなります。例えば、アイコンタクトの時に名前を覚えておく必要があったり、ボディコントロールが出来れば社会性を伝えやすくなります。上記の順番を踏まえ、具体的な方法を見ていきましょう。
①名前を覚える
ワンちゃんは、話しかけると言葉の響きでいろいろ覚えていきます。経験のある方もおられるかと思いますが、「おやつ」と言っておやつを与えていると、そのうちに「おやつ」と言うだけで喜ぶようになったりします。名前に関してもそのようなコツがあります。それは名前を呼んでワンちゃんが反応した時に撫でたり、大袈裟に褒めてあげることです。
ワンちゃんが自分から寄ってきたりしたときはもちろん、寄ってこないときは逆に名前を呼びながら近付いて撫でたりしてみてください。注意点としては名前を統一して呼ぶことです。ワンちゃんを褒めたり撫でたりする理由は、それがワンちゃんにとって楽しいことや嬉しいことに繋がって覚えるスピードが速くなるからです。
「名前」は音の「響き」なので、その「響き」の違いがワンちゃんの解釈に繋がります。名前を統一するのはワンちゃんが混乱しないためでもあります。家族間での呼び方は統一しましょう。ちなみに、ワンちゃんは声の高低も聞き分けられるので、高い声で褒めたりすることで効果があがります。元々ワンちゃんがうなる時に低い声でうなるのは、低い声は威圧に繋がるからです。話しかけたり褒めたりするときは高い声の方が良いですよ。
②トイレトレーニング
トイレトレーニングと聞くと難しく聞こえますが、『トイレシートの上が排泄するところ』と理解してもらうことですので、意外と簡単ですよ。基本的に反復練習なので、コツは名前を覚えるのと同じように成功=嬉しいに結び付けることです。叱ったり怒ることは絶対にしないでくださいね。
①トイレシートの敷く場所を決める
トイレトレーニングは、なるべくスペースが取れる場所で行います。トイレシートは、最初は何枚敷いても大丈夫です。徐々に枚数を減らしていきましょう。何枚も敷く意味は、ワンちゃんは足の裏の感覚と視覚、トイレシートのにおいでトイレと判断するので、まずはトイレシートの上で排泄をさせることが重要だからです。
②排泄時にトイレに連れていく
犬が排泄する前には、一定のサインを見ることができます。クルクル回り出したり、床のにおいをしきりに嗅ぎ出したりします。最初のうちは抱っこしてトイレまで連れていきましょう。連れていくことでワンちゃんはその場でしたらダメだと理解していきます。たとえ失敗したとしても、決して叱ったり怒ったりしないでくださいね。覚えてくると自分からトイレの位置まで行ってくれるようになります。
③シートの上で出来たら褒める
排泄が成功したらたくさん褒めてあげてください。おやつを与えてあげても良いですよ!「エライね~」と声をかけたり、撫でてあげたりすることでより覚えやすくなります。褒めるのがなぜ良いかというと、ワンちゃんにとって嬉しいや楽しいという感情が、脳の働きを活性化させるからです。つまり覚えが速くなります。褒めて伸ばすことを基本としてください。
④汚れたシートを取り替える
汚れたところに排泄をするのを嫌がるワンちゃんもいます。一度汚れたシートを取り替えるのはもちろんですが、においがついてるからなどで再利用すると、おしっこをしなくなることがあります。
③アイコンタクト
アイコンタクトとはお互い目を合わせることです。ワンちゃんに『おすわり』させるときに、飼い主さんに注目→「お座り」と言う→ワンちゃんが座るという順番になります。このときの注目もまたアイコンタクトです。ワンちゃんに何かをさせるときにこの注目があると、飼い主さんは指示を出しやすくなり、ワンちゃんからすると「何かをさせたいんだ」と理解に繋がり、行動をスムーズにすることができます。
もちろん、お互い目を合わせるだけで信頼や癒し効果を得ることもできます。次にアイコンタクトのしつけ方法についてみていきましょう。
①ワンちゃんの名前を呼び、目を合わせるようにします。
②まずは目があったら褒めてあげましょう。
③次におやつを用意します。おやつを手に持ち、名前を呼んでもワンちゃんがおやつを見ているうちは与えず、目が合ったおやつをあげましょう。
ここでひとつ注意ですが、アイコンタクトのしつけを四六時中しないということです。なぜなら、むやみやたらと目を合わせることはワンちゃんにとって威嚇をする意味に繋がるからです。名前を呼んで目を合わせることがポイントですから、目を合わせても大丈夫と思ってもらえるには少し時間がかかるものと覚えておいてください。アイコンタクトのしつけをするときは、しっかりしつけをする時間としない時間を分けるのがおすすめです。
④ボディコントロール
ボディコントロールとは、どこの部位を触られても嫌がらなくすることです。これが出来るようになると、歯磨きや耳掃除、爪切り、肛門腺しぼり、トリミングなどあらゆることが出来るようになります。ワンちゃんが嫌がる部位は口、耳、手足、お腹、腰、尻尾です。徐々に触っていくようにして慣れていきましょう。
口のボディーコントロール
口は、最初に優しく頭を撫でてから、少しずつ鼻の方まで撫でていくような感じで触ってみましょう。それから指先で口付近を撫でていきます。嫌がられたら最初に戻り、また少しずつ広げていきます。口付近を撫でて嫌がられなければ、口をめくって歯を見てみましょう。ここまでくれば大丈夫です。
耳のボディーコントロール
耳は首筋から始めていきましょう。首筋を撫でたり、マッサージをしながら耳元まで少しずつ移動していきましょう。耳元まできたときに撫で方によってはくすぐったいので、マッサージしながらがおすすめです。耳を裏返して中を覗けるようになれば大丈夫です。
手足のボディーコントロール
同じような手順で手足の付け根辺りから始めましょう。手足付け根辺りはマッサージされると気持ちがいいので、マッサージがおすすめです。徐々に先の方まで広げていき、肉球を軽くつまめるくらいになれば大丈夫です。
お腹のボディーコントロール
お腹は寝転がれるくらいの場所をとり、首辺りから毛並みに沿って大きめに撫でていきます。少しずつお腹に近付いていき、胸からお腹にかけて撫でていきましょう。ワンちゃんがゴロンとしてお腹を差し出すくらいになれば大丈夫です。
腰のボディーコントロール
腰はくすぐったくもあり、ワンちゃんにとっては上下関係を意味するところなので慎重にいきます。出来れば両手を使い、首辺りから撫でていき、首を撫でながらもう片方の手で腰まで広げていきましょう。全体的に大きく撫でられるようになったら、上から抱きしめるようにして撫で続けましょう。ここまでできれば大丈夫です。
尻尾のボディーコントロール
尻尾は足の付け根から撫でていきます。少しずつ尻尾の方まで撫でていき、尻尾を軽くつまめるくらいになれば大丈夫です。これらが難なく出来るようになれば、大体の健康に関わるケアや病院に連れて行った時の診断、トリミングも大丈夫です。また、友達など他人に触られることもでき、誤って噛んでしまうことの防止にも繋がります。ちなみにボディコントロールに慣れてくると、ワンちゃんの方から「撫でて」と体を差し出してくれるようになりますよ。
⑤ハウストレーニング
ハウストレーニングとは、ケージやクレートをワンちゃんのくつろぐ場所にすることです。そのため、日々クレートなどを家にセットしておく方が良いでしょう。大きさはワンちゃんが中で回ることができるより、ひと回り大きいくらいがいいです。
ハウストレーニングは無理に中に連れていくことは絶対にしないでくださいね。あくまでも、ワンちゃんがくつろげる空間にすることです。では、実際にくつろげる空間にする方法を見ていきましょう。
①クレートの扉を開けておく
まずはクレートの扉を開けておくか固定してから開始します。最初から閉めたりするとくつろぐ場所というイメージが無くなる可能性があるためです。
②クレートの中におやつを入れて見つけるまで放っておく
ワンちゃんが見ていない時に中におやつをセットします。中のおやつはあえて教えずに放っておきましょう。ワンちゃんが中のおやつを見つけて食べたら再び見ていない時におやつをセットします。中に入るといい事があると思って貰うためなので、褒めることはしないでください。また、無理に中に連れて行かないでください。なぜなら、くつろげるイメージが無くなる可能性があるためです。
③おやつを見つけづらくする
今度は毛布などを入れて、『見つけやすいおやつ』と『毛布などに隠して見つけづらいおやつ』の2つを用意します。これはクレート中での滞在時間を増やすのが目的です。おやつを徐々に見つけづらくすることで時間を増やしていけます。
④「ハウス」と声掛けして覚える
ワンちゃんがおやつを探しにクレートに入ったときに、「ハウス」と繰り返し声をかけていきます。ある程度覚えてきたら、アイコンタクトをして「ハウス」と声をかけましょう。自らクレートに入ったらおやつをあげます。
⑤扉を閉めて時間を増やしていく
ある程度ハウスを覚えてきたら、今度は扉を閉めてみましょう。最初はすぐに開けます。一連の動作ができたら、おやつをあげて徐々に閉める時間を増やします。時間を長くできたら実際に持って家の中を歩いてみましょう。ここまで出来るようになれば大丈夫です。
ハウストレーニングをする理由は、長期外出や入院、更には災害時に対応できるようにするためです。ケージやクレートをくつろげる場所にすることができれば、ワンちゃんにかかるストレスを軽減できてワンちゃんの健康的な成長を望めます。
⑥社会性を身に付ける
社会性は、ワンちゃんの恐怖心や警戒心を取り除いていくことで身に付いていきます。例えば、家の中では聞くことのない音だったり、会うことのない他人だったり、ワンちゃんからする未知のものは恐怖でしかありません。吠えたり噛んでしまったりと問題行動に繋がってしまうので、社会性を身に付けることが重要です。
①外出(散歩)をする
ワンちゃんを外に出す機会を増やしていくことによって社会性が身に付いていきます。人通りがあったり、見たことの無い景色、もしかしたら他の飼い主さんがワンちゃんを連れて散歩しているかも知れません。外出することで新しいことをたくさん経験できます。
外出を増やす理由は、ワンちゃんが環境に慣れ親しんでいき、恐怖心や警戒心を無くしていけるからです。極端に外出が少ないと外の環境はずっと恐怖のままで、心身共にワンちゃんの成長を妨げてしまいます。回数を重ねる度に外は大丈夫と理解していきます。
②無理強いはしない
他の飼い主さんやワンちゃんと対面したときに、無理に近付けて仲良くさせようとしたり、嫌がってることを無理にさせようとしてはダメです。仲良くすることだけではなく、苦手な場面もあることを理解して慣れていくことが大切です。なぜなら無理強いはワンちゃんにとって恐怖体験になるからです。一度恐怖を覚えたことには拒絶反応が出てしまう可能性があります。
社会性を身につけたい時に拒絶反応が出てしまうと本末転倒です。ワンちゃんにも選択肢を与えてあげて、飼い主さんはなるべくフォローしていくのが理想の進め方です。
③過保護にしない
他のワンちゃんや他の飼い主さんと対面したときに、飼い主さんが「うちの子は臆病だから」とか「他人に触られるのが嫌だ」など、飼い主さんの判断のみで決め付けてワンちゃんを制御してしまうのはNGです。特にワンちゃんが興味を持ったことを阻止してしまうともったいないですよ。
命の危険がないことであれば、ワンちゃんには積極的にチャレンジさせてみましょう。過保護は社会性を育む機会を奪ってしまうことに繋がってしまいます。何を持って過保護とするか?は難しいところですが、ワンちゃんが興味を示したことはワンちゃんを成長させることに繋がると覚えておいてください。
⑦おすわり、待て、伏せを覚える
よくワンちゃんに覚えさせることとして『おすわり』『待て』『よし』『伏せ』がメジャーですが、これはただの芸当ではなく、ワンちゃんとの信頼関係の強化や危険の回避に役に立つものです。興奮しやすいワンちゃんを制御したり、散歩中の他人に飛びかからないよう危険を回避するのにとても効果的です。それぞれのしつけ方法を記載していきますので是非お試しください。
①おすわり
①正面でワンちゃんと向かい合い、アイコンタクトから始めます。(ワンちゃんが座っていないときに始めてください)
②ワンちゃんが座るタイミングを待ってそれに合わせて「お座り」と言います。
③褒めて細かくしたおやつを与えます。①〜③を何度か繰り返します。
④今度は先に「お座り」と言って座ったらおやつをあげます。これを何度も出来るようになれば大丈夫です。
おすわりは特に興奮を収めたい時に効果的です。「おすわり」と言うことで、ワンちゃんが取るべき行動を思い出すことができるからです。お座り自体は短時間の制御と覚えておいてください。
②待て、よし
①ワンちゃんの正面におやつを置き「待て」と言います。おやつを食べようとしたら下げて、また繰り返します。
②最初は2秒くらいで「よし」と言って食べさせてあげましょう。食べたら褒めてあげます。
③徐々に秒数を増やして10秒くらいまでを目標としましょう。
『待て』は通りすがりの人やワンちゃんに飛びかかりそうになった時に効果的です。「待て」と言って制御している間にワンちゃんを抱っこしたりできるからです。待て自体は10秒程度の制御と覚えておいてください。
③伏せ
①アイコンタクトから始めます。
②お座りをさせます。そこからおやつを鼻先まで近付けていき、そこから下にさげていきます。
③ワンちゃんがつられて肘が曲がった時に「伏せ」と言います。そうしたら褒めておやつをあげましょう。①~③を繰り返します。
④今度はおやつを近付けないで「伏せ」と言います。これで伏せが出来るようになれば大丈夫です。もちろん成功したら褒めておやつあげましょう。
伏せは長時間負担の少ない体勢で居れるので、飼い主さんの近くで大人しくさせておきたい時に効果的です。以上の3つを使い分けることで危険回避から思わぬ怪我を負わせてしまうことへの対策になります。
是非マスターして下さい。
ちなみに、他の『お手』や『おかわり』なども覚えるメリットはあります。先にお伝えしたとおり、信頼関係の強化につながるからです。命令するという感覚ではなく、コミュニケーションという感覚ですね。ただし、『お手』や『おかわり』をしてくれたら、毎回きちんと褒めてあげましょう。そうしないと、無意味なコミュニケーションになってしまい、ワンちゃんが嫌になってしまいますからね。
しつけは何歳までにしないといけない?
しつけを楽にスムーズするのであれば、生後3週間くらいの子犬の時期から始められることをおすすめします。生後3週間〜生後4か月までは社会化期と言われていて、最も情報を吸収しやすい時期・・・ゼロの状態からなので覚えるのが速いからです。ペットショップなどでワンちゃんを家族に迎え入れる時には、社会化期のワンちゃんが多いことでしょう。そのため我が家に迎え入れる時からしつけをするのがおすすめなのです。
とはいえ、ワンちゃんを迎え入れるタイミングはそれぞれ家庭によって違うことと思います。子犬のときもあれば成犬のときもあるでしょう。だからと言って、「もう成犬だからしつけは無理かな」とあきらめる必要はありません。ワンちゃんは何歳からでもしつけることができます。
ただし、成犬(10ヶ月〜1歳6ヶ月)になると独特な癖が付いたりしているので、覚える時間は仔犬と比べると格段に多くなります。それでも不可能ではないですので、根気よくやさしく付き合ってあげてください。いずれにしても我が家に迎え入れたときからしつけをしていくべきです。
まとめ
愛犬のしつけ、いろいろやらなければならないと思いながら、思い付きでやってしまいがちですよね。そうなってしまうと、ワンちゃんは『いったい何をすればいいのか?』が分からなくなり、覚えられるものも覚えられなくなってしまいます。そんなことにならないように、今回効率的なしつけの順番についてお伝えしました。
記事の中に『おやつ』というキーワードがたくさん出てきたと思います。ワンちゃんのしつけに『おやつ』は最大の武器になります(笑)ので、上手に使いこなしてくださいね。少しでもワンちゃんの成長の糧になればと思います。